一所懸命(いっしょけんめい)
｢一所懸命｣と｢一生懸命｣の二つの言葉は、大人になってもどちらが正しいのか混乱しやすいものです。何しろ発音も似通っているので、人によっては方言による聞き違いでどちらも同じという人までいて、何よりそれが半分は正解という点もあるので余計に複雑にするのです。では、実際はどんな違いがあり、どんな意味や由来があるのか詳しく調べてみました。
一所懸命の意味
｢一所懸命｣の意味は以下の通りです。
・命がけで物事に取り組む。真剣に打ち込む。
・中世日本で生活の頼みとして命をかけて領地を守った事から、その領地。
・同義である｢一生懸命｣の大元の言葉。｢一所懸命｣から派生したのが｢一生懸命｣となる。
”一所”は｢一つの場所｣｢同じ場所｣｢一か所｣、”懸命”は｢全力で努力する｣｢精一杯｣｢命を懸ける｣｢必死に頑張る｣となり、何かを真剣に打ち込む様であり必死で物事を取り組む姿の事です。要するに｢死に物狂い｣｢決死の覚悟｣｢命がけ｣といった言葉ともほぼ同じ意味合いですが、同時に実際にはそこまで必死でなくても皆が理解している馴染み深い言葉として、安易に用いられやすい面もあります。ですから、友人同士などでは些細な事でもまるで口癖の様に｢一所懸命やった｣と言い、仕事で上司にアピールする際にも｢一所懸命頑張りました｣と用いられます。この他にも、由来･発祥となる｢一所懸命の地｣｢一所懸命の土地｣という使い方も有名です。
一所懸命の由来・出典
｢一所懸命｣の由来は、｢一所懸命の土地(地)｣という鎌倉時代頃に定着し現在にも通じる、土地(農地)に対する人々の価値観が高まった傾向の事です。この時代は農業が主流なので、領主は先祖から受け継いだ土地を命がけで守り子孫に残そうとしたのです。代々受け継ぐ土地(一所)を必死に守るので｢一所懸命の土地｣で、それが省略され｢一所懸命｣となりました。
一所懸命の類義語・同義語
｢一所懸命｣の類義語には、｢一生懸命｣｢一心不乱｣｢一意専心｣などが挙げられます。
一所懸命の使い方・例文
例文1.バッティングセンターで一所懸命にバッドを振り回したが、結局はいつも空振りばかりで余計にストレスが溜まる。
例文2.アイドルやアニメファンはなぜあんなに一所懸命になれるのか謎である。
例文3.結婚相談所に一所懸命通ったが、結局は相談員に真剣さが足りないと注意された挙句に会費を取られて終わってしまった。
例文4.母が一所懸命作ってくれた料理は、スーパーの惣菜に遠く及ばないので、美味しいと訊かれても返答に困る。
例文5.高校卒業後は会社員となり一所懸命仕事を頑張ったが、結局は大学入試を頑張った後から入社した後輩の方がその後の人生が安泰なのは当然で、そして両親が上級国民ならさらに日本流カースト制度で優位に立てるので、バカらしくなる。
アイドルファンから結婚相談所などを皮肉った文章に｢一所懸命｣を使った例文となります。
一所懸命の会話例
妻がパートに出る様になり、夫が心配をするという会話です。
一所懸命の豆知識
｢一所懸命｣と｢一生懸命｣の比較を含めて違いなどの解説となります。最初に出来た言葉が｢一所懸命｣で、その発音を｢いっしょうけんめい｣と誤った事から｢一生懸命｣が派生し、現在は逆に一般的に使われる様になりました。ですから、｢一所懸命｣を誤字と勘違いしている人も多いようですが、正しくは両方が使えて同義ですが、｢一所懸命｣が元々あった言葉でその後誕生したのが｢一生懸命｣になります。因みに｢一生懸命｣の”一生”から、｢生涯かけて必死になる｣と理解している人が意外に多いですが、それは誤りです。
｢一所懸命｣…大昔の日本で土地を必死に守った事から誕生し、必死や真剣という意味。
｢一生懸命｣…｢一所懸命｣から派生した言葉で同義となる。
一所懸命の難易度
｢一所懸命｣は漢字検定準2級から10級相当の文字組み合わせで、”懸”は準2級で高校レベル、”所”と”命”は8級で小学校中学年レベル、”一”は10級で小学校低学年レベルの四字熟語となります。
一所懸命のまとめ
｢一所懸命｣は鎌倉時代頃の土地(農地)への意識変化から誕生した言葉で、命懸けで取り組むや必死という意味合いになります。仕事から勉強、遊びなど真剣になる様々な場で使える大変便利な言葉なので、だからこそ本来の必死さがなくても、軽い感覚で使えます。一方、その後誕生した｢一生懸命｣の方が現在はより広く世間に浸透し、特に漢字表記では優先されています。
