【一子相伝(いっしそうでん)】の意味と例文と使い方

一子相伝(いっしそうでん)

1980年代に少年青年時代を迎えた中高年世代なら、「一子相伝」と聞くとあの伝説的な名作漫画「北斗の拳」を思い出すと思います。主人公・ケンシロウが伝承した北斗神拳は「一子相伝」で、子供ながらにその歴史的な重みを作品から感じ取ったものです。それから月日が経過して、「北斗の拳」や「一子相伝」などを子供時代の思い出として忘れかけた人なら、このページを偶然開いて思わず記憶が蘇りハッとした事でしょう。そんな前置きはさておき、本題の「一子相伝」の解説となります。

一子相伝の意味

「一子相伝」の意味は以下の通りです。
・学問や技芸の秘密や奥義を自分の子供一人だけに伝える事。
・学問などの奥義や本質を子供一人だけに伝授させ、他には誰一人秘密にする。
”一子”は「一人の子」「子供の中の一人」、”相伝”は「代々受け継ぐ」「人から人へ伝える」となり、学問や技芸などの最も重要な肝となる奥義・秘密を自分の子供一人だけに教える事です。昔ながらの伝統として「一子相伝」の習慣に倣ったもので、理由は諸々ありますが、亜流を増やさないのが最大の目的なようです。複数に秘密を伝えると、それだけ争いや対立が生まれる恐れがあります。何よりも、秘密を大勢が知るのは最早秘密ではなく価値がなくなるからです。一人しか秘密や本質を理解しないからこそ、貴重性や重要性が高まるのです。そんな事から、現在も「一子相伝」を大事に守る仕事は多数あり、例えば伝統ある料理屋や和菓子店、日本酒造りなどがあります。他にも、歌舞伎などの芸事の世襲制も「一子相伝」と表現して問題がないでしょう。由緒ある代々受け継ぐ芸に対して、「一子相伝の家の芸」と言います。

一子相伝の由来・出典

「一子相伝」の由来は、残念ながら不明です。諸説入り乱れていますが、信ぴょう性高いものはありません。文献としては、江戸時代前期の狂言伝書「わらんべ草」(1660年)などに文言が記されています。

一子相伝の類義語・同義語

「一子相伝」の類義語には、「父子相伝」「一家相伝」「門外不出」などが挙げられます。

一子相伝の使い方・例文

例文1.歴史ある料理屋には秘密のタレを一子相伝として、他の誰にも教えないというのがよくある。
例文2.これだけネットから容易に情報が得られる社会だからこそ、一子相伝を守るのはブランドとしても貴重なのだ。
例文3.現在は少子化なので、一子相伝を受け継ぐ文化も年々廃れていくのだろうと、思わず心配をしてしまう。
例文4.妻の実家は有名な酒蔵だが、跡継ぎがいないので義父達は孫を一子相伝させようと目論見を立てている。
例文5.拳法など武道で一子相伝するのは今では少ないが、政治家が息子に地盤を引き継がせる世襲は懲りずに相変わらず延々と続いている。
酒蔵や料理屋から政治世界で「一子相伝」を使った文章となります。

一子相伝の会話例

男性
ハァー、今月も生活がギリギリだなー!
女性
あなた、そんな愚痴を言わないでよ。
男性
ごめんごめん。そんなつもりじゃないけど、つい口から嘆きが出ちゃうんだよね。ところで、我が家の家系にはお宝めいたものは何かないのか?
女性
私の家はそんなの聞いた事もないわ。あなたの方はどうなの? 息子だけに引き継がせる伝説の秘宝に関する秘密とか! そんな一子相伝みたいなおとぎ話に期待するよりも、頑張って働くしかないんでしょうね。

中年夫婦が生活苦からの嘆きを会話しています。

一子相伝の豆知識

「一子相伝」の類語でもある「門外不出」との違いについて深掘りして解説します。この二つは同じ文章内で使われる場合もありどちらも似たような意味合いですが、厳密には違います。「一子相伝」は基本的には子供一人だけに秘密や奥義を教えますが、「門外不出」は芸術品などを自宅にしまって外には絶対に出さない事です。よって、「一子相伝」は身内でも父(師匠)と息子(弟子)のみの限定だが、「門外不出」は家族全員が共有も可能です。扱う物が違うので当然と言えば当然ですが、秘密を少数で守るのと家族や親族で守る違いとも理解できます。

一子相伝の難易度

「一子相伝」は漢字検定7級から10級相当の文字組み合わせで、”伝”は7級、”相”は8級でそれぞれ小学校中学年レベル、”一”と”子”は10級で小学校低学年レベルの四字熟語となります。

一子相伝のまとめ

「一子相伝」は、代々受け継がれる学問や技芸などの秘密や奥義を子供一人だけに伝授して、他には家族といえども絶対に教えない事です。云わば、大切を秘密を父と息子だけで守り抜き伝統を守ります。現代でも、武道以外にも料理や芸事などの世界ではこの仕来りが当たり前となっています。

一家団欒を大切にする
最新情報をチェックしよう!