敬天愛人(けいてんあいじん)
”愛人”という言葉には、大人の男女による独特の淫らな関係を連想させるものがあります。ですから、今回の「敬天愛人」からも、その様に感じ取った人もきっと多いでしょうが、安心して下さい。「敬天愛人」は云わば、大自然や人類を愛するという壮大で宗教的な言葉です。そんな「敬天愛人」は、どの様な意味や由来が込められているのか調べてみました。
敬天愛人の意味
「敬天愛人」の意味は以下の通りです。
・天を敬い人を愛する。
・座右の銘として使われる言葉で、天が誰しもを愛するように自分も人を愛する事。
・西郷隆盛の言葉で学問の目的として述べた言葉。
”敬天”は「天をおそれ敬う」、”愛人”は「人を愛する」「愛する愛しい人」となり、「敬天愛人」は「天を敬い人を愛する」という意味です。正直、これだけでは本質を掴めないので、日本でこの言葉を最も有名にした西郷隆盛の「南洲翁遺訓」によると、原文では「~天を敬するを目的とす。天は我も同一に愛し給ふゆえ、我を愛する心を以て人を愛する也」と書かれています。これを要約すると、「天は誰しも万遍なく愛したのだから、自分も愛する心で人を愛するのが天を敬う事」となります。自己流解釈も若干含めていますが、天という圧倒的な存在を前にして、人が出来るのは人を愛する事だけなのです。また、自らを”天”とすれば、”人”は家族や仲間、そして他人とも解釈できます。ですから、当初は学問の目的とした言葉だったようですが、西郷隆盛の崇高で人徳ある人物像とも相まって、その後は経営者などに座右の銘として好まれるようになりました。自分の為だけに利益を求めるのではなく、人は人の為に生きて捧げるという姿勢が大勢の心を打ったのでしょう。実際の使い方としては、「敬天愛人を胸に」「敬天愛人を信じて」「敬天愛人を実践」といった風になります。
敬天愛人の由来・出典
「敬天愛人」の由来は、中国清時代の漢字字典「康煕字典」となります。また、薩摩藩士・西郷隆盛の遺訓集「南洲翁遺訓」によって、日本では劇的に広まりました。
敬天愛人の類義語・同義語
「敬天愛人」の類義語には、「敬天愛民」などが挙げられます。
敬天愛人の使い方・例文
例文1.何度も挫折したが敬天愛人の言葉に救われ、その度に自分を奮い立たせて頑張れている。
例文2.新年を迎えて、今年の目標は敬天愛人にすると決心した。
例文3.彼女から、何でそんなに正直で人の為に自分を犠牲にするのと問われたが、「敬天愛人だから」としか返せる言葉が見つからなかった。
例文4.尊敬する経営者の多くが敬天愛人を座右の銘にしているが、その深い意味を知り自分も大変感銘を受けた。
例文5.災害時のボランティア、コロナの医療従事者などはそれこそ敬天愛人の使命感から働けているのだろうと思ってしまう。
「敬天愛人」を座右の銘、ボランティアや医療従事者などに使った例文となります。
敬天愛人の会話例
幼い子供の寝顔を見ながら、夫婦が将来について語り合っています。
敬天愛人の豆知識
「敬天愛人」は中国発祥の言葉ですが、西郷隆盛の名言としても有名です。厳密には江戸時代の儒学者・広瀬淡窓と明治時代の啓蒙思想家・中村敬宇の言葉を合わせて自らの言葉「敬天愛人」にしたとも言われていますが、古代中国の「康煕字典」に記された「敬天愛人」を広瀬淡窓や中村敬宇が引用したのが、実情ではないかと推測できます。
敬天愛人の難易度
「敬天愛人」は漢字検定5級から10級相当の文字組み合わせで、”敬”は5級で小学校高学年レベル、”愛”は7級で小学校中学年レベル、”天”と”人”は10級で小学校低学年レベルの四字熟語となります。
敬天愛人のまとめ
「敬天愛人」は「天を敬い人を愛する」という意味で、西郷隆盛の言葉として大変有名です。現在は経営者や成功者などから若い人達にとっての座右の銘としても定着し、人としての生き方が共感される理由なようです。宗教用語めいた感もありますが、それぐらい尊く崇高な言葉なのです。