【慇懃無礼(いんぎんぶれい)】の意味と例文と使い方

慇懃無礼(いんぎんぶれい)

現在でも「無礼」や「無礼者」と注意をするのは、そこまで珍しい表現ではないです。時代劇やお年寄りなどが好んで使用すると窺えます。しかし、「慇懃無礼」は「無礼」などと比較すると、見聞きする頻度は少ないので、どんな意味なのか勘繰ってしまいますよね。”無礼”があるので、失礼に関係している事から本当に失礼な人を喩えているのではと、まずは思ってしまいます。果たして、本当はどの様な意味合いなのか調べてみました。

慇懃無礼の意味

「慇懃無礼」の意味は以下の通りです。
・丁寧すぎて逆に無礼。丁寧すぎると、嫌味や誠意がないと相手が感じる。
・言葉遣いや態度が丁寧すぎて、かえって無礼である。
・上辺は丁寧で礼儀良いが、実は尊大で無礼な事。
何事も限度あるので、いくら丁寧な態度でも、それが一定の限度を超えるようでは、相手をバカにしていると思われても仕方ないのが「慇懃無礼」です。要は状況に応じて、相手に不快を与えない態度や言動を取るのが常識でありマナーで、それを守れないのは尊大だと受け止められてしまいます。”慇懃”は「真心がこもり礼儀正しい」「非常に親しく交わる」、”無礼”は「礼儀にはずれる」「相手を軽んじる」「失礼」となります。

慇懃無礼の由来・出典

「慇懃無礼」としての由来は不明です。しかし、”慇懃”は奈良時代に成立した日本最古の和歌集「万葉集」では「ねもころ」と呼ばれ、意味は「心を込めて」で現在と同じ様なものでした。その後、平安時代の古辞書「色葉字類抄」で「いんぎん」と呼ばれるようになり、現在に至ります。

慇懃無礼の類義語・同義語

「慇懃無礼」の類義語には「慇懃尾籠」が挙げられ、他にはありません。故事成語・諺では「礼も過ぎれば無礼になる」「過ぎたるは猶及ばざるが如し」「名の木も鼻につく」「分別過ぐれば愚に返る」などが類似となります。

慇懃無礼の使い方・例文

例文1.後輩は旧帝大出身なので、慇懃無礼な態度が何かと鼻につく。
例文2.上司から、お前は自覚なく慇懃無礼になるから気を付けろと注意された。
例文3.慇懃無礼もダメだが、敬語がまったくできない後輩も社会人失格だ。
例文4.外国から見たら、日本のサラリーマンは慇懃無礼に感じて働くのがやり辛いだろう。
例文5.家庭内別居状態の両親は、親戚や友人が遊びに来る時だけ無理して取り繕うので、会話はぎこちない慇懃無礼なやり取りが続く。
失礼な態度や言動を「慇懃無礼」とした例文となります。

慇懃無礼の会話例

男性
おはよう。ん、どうしたの? 何か言いたそうだね。
女性
先輩はいつ見ても、恰好が良くて素敵だなーと思って。
男性
絶対に1ミリも思ってないでしょう。そんなお世辞は、慇懃無礼って言うんだよ。
女性
そういうズバッと言う所も男らしいです。だから…、財布忘れたので千円貸してくれませんか?

職場の後輩女性が、先輩を男性を煽てて千円借りようとする会話です。

慇懃無礼の豆知識

「慇懃無礼」と同じような相手に失礼となる四字熟語は、「前倨後恭」「傲岸不遜」「幸災楽禍」「傲慢無礼」「漱石枕流」などがあります。有名なのは「傲慢無礼」で、態度が大きく礼儀がないという意味です。「慇懃無礼」や「傲慢無礼」の様に”無礼”が付くと、基本的には相手に失礼な態度を取っています。

慇懃無礼の難易度

「慇懃無礼」は漢字検定1級から8級相当の文字組み合わせで、”慇懃”は1級で大学一般レベル、”無礼”は小学校中学年レベルの四字熟語となります。

慇懃無礼のまとめ

「慇懃無礼」は、丁寧すぎて逆に相手を不快にするや失礼であるという意味の四字熟語です。言葉遣いや態度が丁寧なのも限度を超えると、相手は嫌味や不快に感じるものです。そこから、丁寧な物言いも常識を弁えるべきとの教訓とも受け取れます。

自分の慇懃無礼さに気づかない男
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