【一死報国(いっしほうこく)】の意味と例文と使い方

一死報国(いっしほうこく)

「一死報国」とは「自分の命よりも国に尽くす事」です。要するに国に絶対忠誠の精神で、究極の自己犠牲のようなものです。それだけに現在の平和で自由が尊重されている社会ではやや時代遅れな言葉となっているのは事実で、現に若い世代ではまず共感は得られないでしょう。そんな「一死報国」の解説となります。

一死報国の意味

「一死報国」の意味は以下の通りです。
・自分の命を顧みずに国に報い尽くす事。
・死を覚悟して国家に尽くす。
”一死”は「命を捨てる」「命を捨てる覚悟」「一度死ぬ」、”報国”は「国家の恩に報いる」「国に報ずる」で、まるで戦時中の言葉と錯覚してしまう言葉が「一死報国」です。実際に太平洋戦争時などでは「贅沢は敵だ」といった有名な戦争標語と一緒に、国民への団結や戦争を容認させる目的で使われていました。国家の為には自らの命を投げ出すのは当然、或いはそんな覚悟を持って挑むという意味なので、現代の感覚なら戦時下の雰囲気を敢えて持ち出す際や会社に忠誠を尽くすサラリーマンの喩えで用いたりします。よって、命懸け・捨て身・死に物狂い・献身などの言葉とも非常に近いものがあります。

一死報国の由来・出典

「一死報国」の由来は残念ながら不明です。文献としては、”一死”は平安時代の貴族で学者・菅原道真の漢詩文集「菅家文草」(900年頃)、”報国”は平安時代初期の勅撰漢詩集「文華秀麗集」(818年)などに文言が記されています。

一死報国の類義語・同義語

「一死報国」の類義語には、「尽忠報国」「鞠躬尽瘁」「義勇奉公」などが挙げられます。

一死報国の使い方・例文

例文1.一死報国や愛国者などは国に尽くすとして便利な言葉だが、その権力者が間違った舵取りでも賛同する危険性がある。
例文2.今の若者に一死報国について熱心に説いても、そんなのは危険思想だとSNSや掲示板で笑われて終わりだろう。
例文3.仕事に真面目な課長は酒を飲むと、一死報国の忠義を尽くすと熱く語るがその癖に万年ヒラだ。
例文4.戦時下の標語は一死報国などどれも強烈でキャッチーだが、それだけに理解に苦しむ。
例文5.一死報国を胸に戦争で亡くなった人たちは、現在のコロナ禍で揺れる日本をあの世からどのように見ているのか。
主に戦争に関連付けて「一死報国」を使った例文です。

一死報国の会話例

男性
まーた政治家が国会中に居眠りしているよ。
女性
どうしてあんなにいつも眠いか知っている?
男性
国会が退屈だから? あ、高齢者だから体力的にきついのもあるよね。
女性
それは、夜な夜な会合という名の酒席で飲んでいるから寝不足で昼間は眠くて仕方がないの。でも本当なら一死報国で国に全力を尽くすものだけど、そんな気持ちは1ミリもないんだから呆れる。

政治批判で「一死報国」を使った例文です。

一死報国の豆知識

「一死報国」から戦争標語に関する言葉は「日本人なら贅沢は出来ないはずだ」「欲しがりません勝つまでは」「全てを戦争へ」、四字熟語では「一億一心」「七生報国」「八紘一宇」「鬼畜米英」などがあります。

一死報国の難易度

「一死報国」は漢字検定6級から10級相当の文字組み合わせで、”報”は6級で小学校高学年レベル、”死”は8級で小学校中学年レベル、”国”は9級、”一”は10級でそれぞれ小学校低学年レベルの四字熟語となります。

一死報国のまとめ

「一死報国」は自分の命を捨てる覚悟があり投げ出しても国に尽くすという四字熟語です。そんな己を犠牲にする献身さから戦争標語の側面もありますが、現在は日常的にはあまり用いられなくなっています。しかし、当時の文献などはもちろんながら今も愛社精神的な形では残されている場合もあります。

一死報国する男性。
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