近所合壁(きんじょがっぺき)
昨今は世知辛い世の中なので、東京での一人暮らしだけでなく、地方都市の一戸建てでも隣に誰が住んでいるか知らないものです。もちろん、中には密な付き合いをしている人もいるでしょうが、それぞれの家庭事情も違いますし、あまり深入りするのはよろしくないと構えてしまいますよね。一方、昔懐かしの映画を観ると、それは長屋の様な生活で隣近所ともワイワイしながらまるで大家族の様な生活を送っているものです。これは現在と過去の生活スタイルのどちらが良い悪いではなく、子供が大勢いて賑やかな食事などを観ていると、ノスタルジーな気持ちに浸ってしまうのです。まるで、そんな時代を経験したかのような感じです。では、気を取り直して｢近所合壁｣についての解説をさせて頂きます。
近所合壁の意味
｢近所合壁｣の意味は以下の通りです。
・近くの家々。隣近所。隣や近所の家。
・壁一つを隔てた隣の家。周辺の家々や住民達。
・｢きんじょかっぺき｣とも読む。
”近所”は｢近辺｣｢近くの家｣｢近い場所｣、”合壁”は｢壁隣り｣｢壁ひとつの隣｣で、平たく言うなら｢隣人｣｢隣家｣であり、｢隣近所｣の事です。近所と隣近所もほぼ同義で厳密な使い分けはないと言えるほどですが、隣家を強調したいなら｢隣近所｣を使う感じでしょうか。そこに｢合壁｣を使っているので、ニュアンスとしては隣家を強調した近所なので、｢隣近所｣や｢四方のお隣｣が｢近所合壁｣となります。さらに深掘りするなら、昔は｢近所合壁｣が使われていましたが、近年は同義である｢隣近所｣が使われている感があります。実際の使い方としては、｢近所合壁に知れ渡る｣｢近所合壁の仲｣｢近所合壁の付き合い｣といった形が多いです。
近所合壁の由来・出典
｢近所合壁｣の由来は、残念ながら不明です。文献としては、江戸時代の戯作文学｢洒落本｣の｢客者評判記｣(1780年)などに文言が記されています。
近所合壁の類義語・同義語
｢近所合壁｣の類義語には、｢近郷近在｣｢近在近郷｣などが挙げられます。
近所合壁の使い方・例文
例文1.母が料理中にしょう油がないのに気付き、近所合壁に借りに行かされたのは幼少期の思い出で、今そんな事をしたら不審者に思われる。
例文2.近所合壁の付き合いだからという理由で、夫は毎回飲みに連れていかれる。
例文3.マイホームを購入するか検討しているが、近所合壁にどんな人が生活しているか分からないので、どうしても躊躇してしまう。
例文4.近所合壁からクレームが入ったので、音楽のボリュームを下げた。
例文5.近所合壁が居酒屋に焼肉屋なので、煙から騒音と酷い環境だが、そこで夜な夜な勉強をしている自分自身を褒めてあげたい。
近所のクレームや問題を｢近所合壁｣とした例文です。
近所合壁の会話例
過去に犯罪を犯した夫婦がお隣との近所付き合いについて会話を繰り広げます。
近所合壁の豆知識
｢近所合壁｣は隣近所といった意味合いなので、そうなると連想するのは｢近所トラブル｣ではないでしょうか。現在は東京だけでなく地方都市でも、一人暮らしをする多くは隣に誰が住んでいるか知らないものです。それが逆にトラブルに発展する恐れもありますが、昭和の後半頃までは隣人同士でも付き合いがあったそうです。しかし、一人暮らしでも冷蔵庫やテレビなどの家電が普及して生活が便利になるにつれ、隣に助けられなくても互いが平気になると、付き合いがなくなるようになったのです。そこに、経済発展による仕事の多様化で勤務時間もバラバラになると夜働く人も多くなり、アパートやマンションも防音性高い壁が使用されたり、コンビニが普及すると料理をしなくなるので、これらが在宅しているか否か分からなくなり、徐々に隣近所を気にしなくなっていったのです。
近所合壁の難易度
｢近所合壁｣は漢字検定4級から9級相当の文字組み合わせで、”壁”は4級で中学レベル、”所”は8級で小学校中学年レベル、”近”と”合”は9級で小学校低学年レベルの四字熟語となります。
近所合壁のまとめ
｢近所合壁｣は壁一つを分け隔てた隣家の事で、要するに｢隣近所｣という意味の四字熟語です。表現的には昔懐かしの使い方に感じますが、一方で壁一つの隣を強調したい際には使われる傾向があります。｢隣近所｣にするか、それとも｢近所合壁｣にするかは明確な基準がなく、それぞれの裁量判断となりますが、趣を感じさせたいなら｢近所合壁｣にするのも良いでしょう。
