【前車覆轍(ぜんしゃのふくてつ)】の意味と例文と使い方

前車覆轍(ぜんしゃのふくてつ)

「前車覆轍」とは「前を走る車が転倒した事から、自分は転倒しないように戒めにする言葉」です。失敗をした人と同じような事をすると、こちらも失敗をするので、そうならないように注意喚起をしています。逆にそのまま同じ失敗をするのが、諺「同じ轍を踏む」です。多分こちらの方が有名ですが、二つをセットで覚えてはどうでしょうか。それでは解説に入らせて頂きます。

前車覆轍の意味

「前車覆轍」の意味は以下の通りです。
・先人の失敗から戒めにする事。
・前を走る車が引っ繰り返った事から、転じて、後ろを走る車も注意すべきという教えや喩え。
・諺「前車の覆るは後車の戒め」(ぜんしゃのくつがえるはこうしゃのいましめ)も同義。
”前車”は「前の車」「前を行く車」、”覆轍”は「転倒した轍の跡」「引っ繰り返った車の車輪跡」で、前を走る車が引っ繰り返った轍の跡となり、そこから、前の車が転倒したら後ろの車は注意するべき、或いは失敗例としての轍跡から、後ろの車は同じ轍跡を通っては行けないという事です。よって、「前車覆轍」は先人の失敗から学び、同じ過ちをしないという教えになります。因みに、よく似た諺「前車の轍を踏む」は前を走る車の轍を後ろの車が踏む事で、そこから、「前の人と同じ失敗をする」「失敗を繰り返す」という意味になります。今回の「前車覆轍」は前の人の失敗を教訓にして注意すべきとなるので、本質的な面で違いがあります。

前車覆轍の由来・出典

「前車覆轍」の由来は、中国前漢時代の歴史書「漢書」の「賈誼伝」です。

前車覆轍の類義語・同義語

「前車覆轍」の類義語には、「後車之誡」「前車之轍」「前覆後戒」などが挙げられます。

前車覆轍の使い方・例文

例文1.父や兄が前車覆轍となってくれたので、私の進学や就職の人生設計はとても楽だった。
例文2.テレビや冷蔵庫といった電化製品も最初のものより、ライバル企業が模倣して出した二番手や三番手の方が実は良い場合が多く、それは前車覆轍になっているのが大きく影響している。
例文3.余程出来が悪いのか、前車覆轍で失敗例があるにも関わらず、やはり失敗を繰り返してしまう。
例文4.日本の第二次世界大戦から原爆という出来事が他の東南アジア諸国にとって前車覆轍として、結果的には良い影響を与えたのだろう。
例文5.政治家や官僚に前車覆轍を説いても何の効果もなく、彼らは絶対に理解しないでこれから何度も隠ぺいや虚偽報告に文書改ざんを続けていくだろう。
失敗を教訓にするといった意味合いで「前車覆轍」を使った例文です。

前車覆轍の会話例

男性
あっ、二重マスクにしているんだ!
女性
うん。コロナが怖いからね。
男性
そうだよね。これだけ感染者が多くて、変異株も出てくると、自分で対策をするしかないよね。
女性
だって、感染者の中には十分気を付けていてもコロナになった人もいるでしょう。だから前車覆轍じゃないけど、私は二重マスクなどさらに徹底して自分を守るの。

コロナからの自己防衛でマスクを二重にしている女性と、その知人男性の会話です。

前車覆轍の豆知識

「前車覆轍」から”失敗”に関する四字熟語は、身近な失敗例を戒めにする喩え「殷鑑不遠」、欲を起こして無謀な行動で失敗する「猿猴捉月」、一度失敗した者が再び勢いを取り戻す「捲土重来」、失敗や挫折から立ち直れない「再起不能」などがあります。

前車覆轍の難易度

「前車覆轍」は漢字検定準1級から10級相当の文字組み合わせで、”轍”は準1級で大学一般レベル、”覆”は3級で中学卒業レベル、”前”は9級、”車”は10級でそれぞれ小学校低学年レベルの四字熟語となります。

前車覆轍のまとめ

「前車覆轍」は引っ繰り返って転倒した前の車から、その轍跡には注意すべきという教えで、先人の失敗を教訓にして肝に銘じる言葉となっています。要するに、同じ過ちをしないようにと先に失敗した人を反面教師として自分への戒めとします。

自転車の車輪が前車覆轍を表す。
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